仕事で何処にも出かけられないのでついついAmazonで購入してしまい、後で部屋に散らばっているマンガの量にやり過ぎ感を覚えるのはもはや恒例になってきたのですが、その中でおもしろいものもだいぶ発掘し、そのなかのひとつがこれ。
『まんがライフMOMO』に連載されている宮成樂さんの『晴れのちシンデレラ』。 この物語は、お金持ちのお嬢様である春日晴ことハルさんが主役の物語。このハルさん、お嬢様学校では「姫」と呼ばれるくらい人望を集めているのですが、大きな秘密があります。それは貧乏暮らしだったこと。
しかし問題はそこではなく、その時の習性がいまだに出て来ることです。例えば金色の夢を見るつもりが、金のエンゼルを当たっている夢になる、夕飯がカレーだとついにやけてしまう、天蓋でベッドでもやしを栽培してしまう、セミ取りをしたくなってしまう、花は(食えるものなら)自然と口にしてしまう等々。
一番の問題(とハルさんが思っている)は、その極貧時代に培った能力がかなりのもので、運動神経がとんでもないことになっています。石臼を軽く持ち上げる等は軽いもので、木登りが軽くできる(むしろしたくてたまらない)、2階から平然と飛び降りる、ついには遠足で遭遇したクマも倒します。しかしクマを倒したことは全く気にせず、周りの友達が気絶したのと一緒に気絶したことになっているのを喜ぶのが、このハルさん。
この作品は、周りにはお嬢様のように見られるけど実はとんでもないパワーガール、しかしそんな彼女が本物のお嬢様にあこがれるのだけど、極貧生活の習性が抜けないという「ギャップ」が笑いどころの中心となっています。
この作品の他の魅力的としては登場人物が皆いい人なのですよね。たとえばこのハルさん、お嬢様初心者が猫をかぶっているようにも受け止められますが、実際に読むとそんなことはない。むしろ自分がお嬢様らしくないのを自覚しつつ、そして頑張っている努力型の人間としてのイメージが強いのですよね。そして万能とも言えるスキルをもっているにもかかわらず(除く芸術方面)、それを鼻にかけるようなこともなく自然にこなし、そして友人の女子学生のお嬢さまっぷりに驚いたり憧れるところなどに好感が持てるのです。
それは主役のハルさんだけではなく、脇役の皆もそうです。一番絡みが多いのは、ハルさんと共に極貧時代を過ごしてきた弟のあたる。姉と共に暮らしてきて、姉のスーパーマンぶりを目にしつつ、自分もかなりすごい能力をもっていますが、やや常識的なので、主にツッコミ役に回っています。しかし彼も貧乏が長いためか、姉同様生け花の花をつい食べるなど極貧時代の記憶や習性が出てきて、じいや立ちをぶわっと泣かせることがあります。
他には友人のお嬢様たちがいて、その中でハルさんにライバル心を持つ三条様も、対抗しようとしては真のお嬢様で身体が弱くついハルさんのお世話になってしまうことになりハルさんと仲良くなっていくなど、基本的に皆がいい人なマンガとなっているのですが、そこがこの作品のほんわかと笑えるいいところであります。
貧乏ギャグ、女子校(ライト百合?)もの、姉弟もの等々いろいろな楽しみ方&魅力がある本作。かなり幅の人が楽しめるコミックスだと思います。