先日読んだ『銘高祭!』。
これは『眼鏡なカノジョ』『眼鏡とメイドの不文律』といったメガネ女子&男子を多く描かれているTOBIさんが『まんがタイムフォワード』で連載していた作品です。ちなみに過去の作品もいい感じのものなので、ほのぼの恋愛系とかメイド系が好きな人にはおすすめです。
■参考:『眼鏡なカノジョ』と犬上すくねマンガ、その眼鏡への愛 – 空気を読まない中杜カズサ
この作品の舞台となるのは、ほとんどがこの学園の中のみ。そして期間も春から夏の学園祭までの数ヶ月という非常に限られた範囲のもの。しかし、ここで様々な人達が動き、それぞれのドラマを展開します。
おおざっぱなストーリーは、主人公で生徒会に所属している2年生、紺野みちえが、生徒会長からいきなり学園祭である『銘高祭』の実行委員長をするように命じられるところから始まり。そして慣れないことで様々なトラブルに巻き込まれながらも、学園祭を作りあげてゆくというもの。
この作品は、たしかにみちえが主役であり、慣れない中トラブルを乗り越えてゆくという行動が中心とはなるのですが、それは一人でやってのけているものではなく、必ず周囲に「人」が存在します。
みちえに最も関係してくるのは、幼なじみのたける。関係を外からは「男とか女とかそれ以前の問題」と言われるように、恋愛感情までには至らないものの、みちえに対して度々このたけるの存在がキーポイントとなります。例えば実行委員長になるように言われて迷っているとき、迷っているみちえの本音を引き出すような行動をして、実行委員長になる決意を固めさせます。
ですが、いつも応援している、というわけではなく、今までは消極的で自分たちの近くにいたみちえが実行委員長で頑張っていると離れてゆくような気がして、友人のアキと複雑な気持ちになったりもしています。このへんの心の動きの描写がかなりいい感じです。
そして、みちえやたけるだけではなく、それを取り巻く人間関係も非常に動きます。主なのは生徒会メンバー。そして彼、彼女たちもそれぞれいろいろなことを思って行動します
まず、みちえを実行委員長にした生徒会長。彼女は何を考えているのかわからないところがありますが、重要なところでは道江をサポートします。
さらに、同じく生徒会の桐原。生徒会長と同じ学年でみちえを実行委員長にすることなどに対してなど、うるさく言っている彼。その彼の話が展開するのは、第八話。しかしここでは視点はポスターイラストを描く美術部の後輩、であり、みちえの友人である朝倉の視点から。彼は先輩の美術部員でもある桐原にほのかな想いを抱いており、絵が完成したときに告白しようと考えていたのですが……
あと、やっぱりメガネペアが出てきます。それは生徒会の先輩と後輩の二人。メガネ先輩にあこがれる1年のメガネ後輩。この二人の物語が第三話で展開されますが、もう王道の恋愛ものなので、結構恥ずかしくなりつつもニヨニヨとしてきます。
その他にも多数の学生、あと学園祭当日には外からのお客も含め、『銘高祭』という舞台でそれぞれのドラマを展開します、憎まれ役と思われる教師も、実はいろいろ考えていることがあったりと、脇役までもがしっかりとそれぞれの思いで行動しているのが、イキイキとした学園生活を表していい感じです。ちなみに、スターシステムを採用していて最初のマンガからもゲストとして登場したりしています。
さて、このような準備段階を迎えていよいよ学園祭に突入するわけですが、みちえが一番自分の計画した学園祭を見て欲しいと思ってるたけるは、当日野球部の試合で参加できません。それでどうなったか……というのは実際にご覧ください。
大きな波乱はそれほどありませんが、かといって平坦というわけではなく、話のあちこちで響く描写が多く、心に残る作品です。欲を言えば、もうちょっと各キャラクターの先が読みたい気はしますが、それはTOBIさんの読み切りや他作品のスターシステムで登場を願うことにしましょう。
学園もの好き、さわやかな恋愛もの好き、幼なじみもの好き、メガネ好きには特におすすめ、そうじゃない人にも読んでほしい作品です。