昔から主人公とヒロインがいて、それぞれが想いあって、その後結ばれるというパターンはマンガの王道となっています。しかし一口にそう言ってもそのパターンは様々です。そして昔のマンガで多かったのは、ヒロインが主人公のことを想い続けていたのをラスト間際になって気がつき、結ばれるパターン(もしくはその逆)。ある意味王道ですね。
しかし、中には片方だけではなく、両方、つまり主人公やヒロイン、もしくは脇役同士の男女が想い合っているのに、いろいろな事情によりなかなかくっつかないマンガというのも多く存在します。その理由は様々ですが、主には立場的な都合で告白するのにためらいがある、みたいな感じですね。ただ、第三者的なところにいる読者としては、もう両方の心情を知っていて、一押しすれば絶対成功することがわかっているのにくっつかないでいるので、そのもどかしさを見せつけられることになります。言うなれば友達以上恋人未満のさらに進展させている感じというか。
とはいえ、くっつかないで微妙な距離を保っている期間というのも、読んでいて楽しいのですよね。というのは作品の場合、そのほぼ恋人と確定している状態で見せつけられるそれは、ある意味幸せな恋愛イベントと同意なので。それについては先日、はてなのほうでちょいと書きました。
■参考:フィクション作品での恋愛において「告白」は本当に至上のものなのか – 空気を読まない中杜カズサ
そんなニヤニヤなシーンを見せつけられながら「お前ら早くくっついちゃえよ」とツッコミを入れたくなったものは、マンガでも今までたくさんありました。ちなみにマンガ史上最長のその微妙な関係を保っていたのは、『コータローまかりとおる!』の功太郎と麻由美だと思います。何せ1982年の連載開始から今まで94巻分、相思相愛なのに恋人未満だという(現在連載休止中。復活してくれないかなあ……)。
で、今日はそのうちいわゆるストーリー4コマと言われる4コマものから、そういった「お前ら早くくっついちゃえよ」とツッコミを入れたくなるカップルのいる(もしくはいた)マンガをいくつか挙げてみようと思います。まあたまにはこういう切り取り方もよいでしょうということで。このテの話が好きな人は、読んでニヨニヨとしてください。
『CIRCLEさ~くる』の境栄と小金井かなた
大学の漫研を舞台にした物語。主人公(ヒロイン)の小金井かなたと境は連載当初の1年の時からお互いに好意を持っているのですが、お互いの性格的にか漫研の雰囲気的にか、なかなか進展することはありません。しかし、時折見せる相手への行為や、思い切って相手を文化祭で一緒に行動したり、スキーで同じリフトに乗ったりするのに誘ってみようとするちょっとした行動が、なかなかニヤニヤとさせられます。物語では二人はいよいよ3年となり、漫研の中心となりましたが、引退までにこの二人は結ばれるのでしょうか。
■参考:暗さゼロのオタクサークルマンガ、『CIRCLEさーくる』 – 空気を読まない中杜カズサ
■参考:『CIRCLEさーくる』に見る女の子への胸小さい発言は好意の証 – 空気を読まずにマンガを読む
『ぽすから』の千谷白樹と門見茜
最近1巻が出た『ぽすから』。美術予備校が舞台。ここで出会った料理好きの少年白樹と、本好きの少女門見茜が、お互い相手に想いを抱きつつ予備校生活を送るというもの。ただ、プレゼントはするわ手は繋ぐわで、ほぼ付き合っているようにしか見えません。実際周りの仲間もそんな感じで冷やかしていたりします。ちなみに茜がわりと嫉妬深く、白樹他の女性に目が向きそうになるトラブルがあると、すぐにジト目をするあたりが可愛い感じ。
このほぼ恋人な二人における障壁は「受験」ですね。過去に一度受験が仲間との競争になることへの認識違いにおいて、一度気まずくなったりもしています。しかし連載ではもうすぐ受験にさしかかっていますので、これが終わったあと、どうなるかが楽しみなところです。
ちなみにこの中村哲也氏については、『ぽすから』以外でもなかなかこういった男女関係描写がうまいマンガがあるので、それはまた『ぽすから』含め別の機会に紹介しようかなと思います。
『キラキラ☆アキラ』の桃太郎とアキラ
団地の上と下の階に住む高校生の幼なじみで、縄ばしごで部屋にやってくる関係。
連載初期の頃は、どうもアキラの方が子供っぽく、恋愛感情をまだ認識できない状態で、仲の良い「桃ちゃん」に寄ってくる感じだったのですが、最近は他の女の子が「桃ちゃん」に近づいたりするのに嫉妬したりする描写が増えてきました。
ちなみにアキラの方はかなりかわいいとされているのに対し、桃太郎の方は太り気味で、自分はアキラにつりあってないのでは……という心理が障壁の一つとtなっているようです。おそらくそれはアキラにとっては関係ないのでしょうが、この二人の心情と関係がどのように変わってゆくかに注目です。
『らいか・デイズ』の来華と竹田
『まんがホーム』などにわりと長期にわたって連載されており、読んだ人からは評価が高い4コマ。天才小学生だけど、やはり小学6年生の女の子というところも来華と、その周りの世界が描かれています。
作品のひとつの軸となっているのが、来華と同じクラスで、天才の来華をライバル視していた秀才少年、竹田の存在と来華との関係。竹田は最初はライバルとして見ていた来華に対して、次第に女の子らしいところを見つけて惹かれてゆき、また来華のほうも、「天才」として自分に接してくる周りとは違って、対等な立場で、時に優しくしてくる竹田に惹かれてゆきます。でも、双方ともまだ小学生な上に、優等生タイプで恋話が苦手なのであまり進展なし。しかし時折見せる相手を想っている描写や、不意の事故で接近した時のテレ具合が読んでいる方もなかなかニヤニヤとさせてくれます。
この二人の場合の障壁は、やはり「小学生」「コイバナ苦手」という、恋愛に対して未知なところが多いのが障壁になっているのですよね。おまけにサザエさん時空だから中学生にもおそらく終わるまでならないっぽい。ただ、サザエさん時空でもそのキャラはいろいろ成長しているのですよね。故に、そのうちこの二人にも重大な変化が訪れるかもしれません(まあゆっくりそのままって感じでもいいのだけど)。
■関連:クリスマスの様子から見る、時間の流れるサザエさん時空の世界 – たまごまごごはん
『にこプリトランス』の結城騎士と美作弥深子
で、ここからは以前はそうだったけど、すでに結ばれたカップル(主に連載が終わったもの)から。
幼なじみであり、イトコ同士という二人。最初から仲がよく、周りから「熟年夫婦」と形容されるような落ち着いた関係でしたが、連載途中から弥深子が騎士に対して想いを寄せてくる描写が増えて、同時に騎士の方もいろいろと弥深子に気があるそぶりを見せ始めます。そして連載終了前、いろいろなドサクサの中で結ばれて、晴れて恋人同士になったのですが、その時はそれまで比較的クールに接していた騎士のほうがタガが外れてベタベタし出すというところもなかなかのニヤニヤポイント。
ちなみに最終巻のあとがきでは、二人の子供の姿まで解説付で書いてあったりします。
『ラジオでGO!』 の藤田と小石川沙絵
こちらはまだ連載終了してませんが、ついこの間(キャラット2010年3月号)で告白が成立したので。ラジオパーソナリティの一人である沙絵とミキサーの藤田が、連載途中からふとしたことでお互いを思い始めますが、かなり藤田が奥手であって、なかなか進展しない。そんなところにお見合い話からすれちがいが生じましたが、先日、藤田が告白して正式にカップル成立となりました。ちなみに連載での告白シーンは、4コマではなく、そこだけ見開きでのコマ割りになるというインパクトのある演出でした。
でもまあ、この二人の場合、なんとなくつきあってからの態度も変わらなさそうに思えるなあ。
『特ダネ三面キャプターズ』の風間慎太と小田とみか
最近電撃大王に移籍し、連載再開した4コマ。この中で小田とみかは幼なじみである風間慎太に淡い想いを抱いていましたが、ふとしたことから風間慎太も自分の中の感情を意識し始めている様子。これからどうなるか注目。
『まじん★プラナ』の有人と茉莉
主人公と幼なじみ関係の二人。つい最近まで、主人公が複数の女の子に囲まれるハーレムマンガ的様相でしたが、最新号では、とうとう(茉莉の前で言ったのではないですが)有人が「俺が好きなのは茉莉ちゃんだから」と告白。今後、今まで振りまきまくった(そしてこれからも振りまきかねない)女性フラグをどう収束させて、結ばれるか否かに注目。
そういえば、ハーレムものって逆に結ばれたいヒロインが出来た途端(もしくは最初からいる場合でも)他の女性キャラは障害になってしまうよなと。
『あっちこっち』の音無伊御と御庭つみき
今まではツンデレ猫タイプつみきが朴念仁の伊御に一方的に想いを寄せる描写ばかりが見られましたが、最近朴念仁ぶりが変化してきたようで。しかし伊御はまだその気持ちが自分でも気づいていないよう。さてどうなるか。
■参考:ほのぼのツンデレ学園コメディ『あっちこっち』 – 空気を読まない中杜カズサ
他
他にもあるでしょうが、とりあえずこんなところで。ほかざっと考えたけど外したのは、『Sweet Home』(男性を投げ飛ばすという特異体質のため近づけないが、想いはほぼ告白しているので)、『1年777組』(恋愛と認識したのが最後の最後、というか最終回でも認識していないかもしれないので)等。
しかしこうして見ると、このテの関係では「幼なじみ」が多いですね。これはやはりこれらのシチュエーションには、恋愛関係を持っていても結ばれない理由が必要だからではないでしょうか。その理由として「幼なじみで仲はよいけど、相手は恋人として自分のことを好きなのか」という葛藤を起こせる幼なじみという関係が活きるのかなと。
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