里好『トランジスタティーセット ~電気街路図~』2巻読了。
ちなみに帯で隠れている表紙の片隅に、同じ作者の『うぃずりず』のりずがいたりする。そういえばこちらの舞台も浅草とか下町だから、そんな秋葉原から遠くないんだよなあ。
で、前にも紹介しましたが、このマンガは秋葉原が舞台。ただ、最近のマンガに多い萌えの町としてのみではなく、部品街など歴史のある土地としての秋葉原を舞台にしたマンガとなっています。「アキハバラ」ではなく「千代田区外神田の秋葉原」という感じ。ただ、萌えを否定しているわけではなく、新旧の両方が共存するキャパシティの広い町として描かれています。
■萌えの街とは違う側面も持つ秋葉原を描いた『トランジスタティーセット』 – 空気を読まずにマンガを読む
さて、今回の主な見所は、ヒロイン(というか主人公)すずと同じ高専に通う女子、キリコ(強引系)とエミ太(美形男性に見えるのが悩みの長身女の子)、みどりの正体の伏線を臭わせるものなどがあります。ちなみに前巻のカバーを外したところにもあった、すずの工作臭(ハンダ臭)フェチっぷりがなかなか。
まあ技術室のような臭いが嫌いじゃない私はわからんでもない気がするけど。そいや玄人志向のパーツでハンダ付けするPCノイズカットを作って以来、しばらくハンダごて使ってないなあ……とは個人的な話。
このあたりシリアス(っぽい展開)とギャグが交互に入っている感じです。で、前回は戦前、戦中の秋葉原の話がシリアス系の話としてありましたが、今回も過去の話、それもすずの中学時代で、すずの初恋らしきエピソードが入っています。それはかつて秋葉原の駅前にあったバスケットコートでのこと。
たしか10年前の再開発前は現在ビルが立ち並ぶ辺りは駐車場で(その前は青果市場。今もあのへんに立ち並ぶ千代田海草とか古い食堂はその名残り)、その隙間にバスケットコートがあり、遊び場になっていたのですね。当時はまだ萌えというよりPCパーツなどの部品の町でしたが、それを買いに行っていたので、そこの前は必ず通りました。ちなみにその駅側正面には、『孤独のグルメ』にもちょっとだけ載っているラーメン屋もあったりしました。当時は秋葉原で食う場所はかなり限られていたので、そこでも何回も食ったなあ。
ちなみにバスケットコートがあったのは正確にはもっと前なので、現在高校生の設定のすずからは若干時間のずれが生じます。
物語は、すずが中学時代に親ともめて金髪だった時代に、秋葉原のコートで会った男に惹かれてゆき、そして今に至る様子。しかしこの描写は特に明示的なラブラブとか萌えではないのですけど、なんだかいい雰囲気なのですよね。まるでアキバにバスケットコートがあった時代っぽい青春というか。
ちなみに部品街の時代からはちょっと早い私としては、このバスケットコートの時代が一番秋葉原として印象に残っている時代でしたので、そういう面も含めて読み入ることが出来ました。
最近の秋葉原しか知らない人でも、この作品を読んでから実際に行くと視点が多少変わると思いますのでおすすめ。また、電子工作を思い出した人は秋月電子なりラジオデパートを覗くのもいいかもしれません。学研の『科学』が休刊になってしまう時代だからこそ。