近年『ひだまりスケッチ』や『けいおん!』『GA』『かなめも』といった萌え系4コマが続々とアニメ化されています。そしてなんとなくこのジャンルのイメージらしきものがややついてきたような感じがあります。それは文字通り萌え系ですが、とりわけ女性同士の友情、時には百合的な交流が多いとか。まあ個人的にはそっちより男女間恋愛的な方が好きなのですが。
■参考:萌え系4コマにおける男女恋愛が描かれているマンガ – 空気を読まずにマンガを読む
どっちにしても萌え系の名のように、基本的に明るい要素で、時々は谷があっても楽しい話が展開されるものが多いと思われます。もしくは普通にギャグマンガとかですね。
しかし、中にはそのなんとなく固まりつつある萌え系4コマというイメージとはある意味において異色とも言える作品もたまに見られるようになってきました。今日はそういうものをちょっとチョイスしてみたいと思います。
『五日性滅亡シンドローム』(ヤス)
『とらドラ!』のイラストで有名なヤス氏の作品。
「ある日学校にひとつの噂が立った。その噂によるとこの世界はあと五日で滅びるらしい」
という文章から始まり、そこで肯定派、否定派が生じ、日常のような非日常、非日常のような日常が展開されます。セカイ系のようで、それともちょっと違う感じ。ヤス氏のイラストで萌え系っぽくはあるのですが、この独特の雰囲気は萌え系4コマはいい意味でキャロットで浮いていました。
どこかのサイトさんで「1999年の空気はこのマンガの世界のようだった」というエントリーを見たような気がしたのですが、言い得て妙かなと。
ちなみに舞台が違ういくつかの章に分かれていますが、「不二編」が一番お気にいり。
■参考:セカイがあと五日で終わりますよ。ほんとに?「五日性滅亡シンドローム」 – たまごまごごはん
■参考:『五日性滅亡シンドローム 1』(ヤス/芳文社) – 三軒茶屋 別館
『ソーダ屋のソーダさん』『ソーダ村のソーダさん』(湖西晃)
こちらはきらら系ではなくぱれっとで連載されていた作品。
一作目『ソーダ屋のソーダさん』は、瀬戸内海の島が舞台。「私、死んでしもうたみたいなんよ……」と語ったヒロイン、早田沙和は、実際に普通に生きているように見えて体は心臓も鳴らず冷たくなってしまいます。しかし何故こうなったか、というのがだんだんと話を進めていくうちに過去に起こった出来事からなぜそうなったのかというのがわかってくるというファンタジー作品。
そしてもうひとつの『ソーダ村のソーダさん』は、スターシステム的に前作のキャラが今度は北海道の村でサスペンスを繰り広げます。帯コピーの「今度は全員死んでいた!?」というもの通り、カメラマン古浦果子は数年前、四人(前作のスターシステムキャラ)が焼死した事件を取材に来ていたら、何故かその四人が生きている、火事の前の風景が……。これも話を進めるうちに真実が少しずつ明らかになってゆく感じ。
ちなみに、どちらも話には暗い内容(死者とか事故とか出生の秘密とか)がかなり含まれているのですが、かなりキャラクターにギャグをさせることによって、暗くなるのを回避している感じがあります。そういえばきららでの連載『かみさまのいうとおり!』も、かなりギャグ(下ネタ)押しして、時折入るシリアスな話を暗くさせないでもってゆくという感じですし、これが湖西先生の持ち味でしょう。
『空の下屋根の中』(双見酔)
以前、ちょっと書いた作品が単行本になりました。
■「ニートマンガ」について語ってみる – 空気を読まずにマンガを読む
さて、この本はニート(ただし女性)マンガですが、最近ではおもちゃ屋でのアルバイトを始めたり、いろいろ現在の、そしてこれからの自分に悩みながら進んでゆく?マンガです。
ここであえて異色としたのは単行本のカラー含む書き下ろしページのインパクトが強かったので。
何故か単行本のカラーページは、このニートを目指す男のダメダメ思考日記が始まり、ほかの書き下ろしページでも親にそれを糾弾されたりとダメっぷりマンガが展開されます。ちなみにこのニート男は本編では全く出てきません。
まあ、本編もほかの萌え系では少ない仕事で考えることとか裏事情とか(万引きの話とかも)、将来の問題とかあって、ちょっと異質ですが、なんか惹かれるものがあります。
他にも、ラストシーンが強い印象を残す口八丁ぐりぐらさんの『おこのみで!』など(単行本未発刊)、こういった作品は萌え系マンガの王道?に混じるようにどの雑誌でも見かけます。そういったものにも注目して、萌え系4コマの可能性を目にしてみるのも面白いのではないでしょうか。