萌えの街とは違う側面も持つ秋葉原を描いた『トランジスタティーセット』

マンガ感想

私は東京の西部に生まれてからほぼ住み着いているので、昔から秋葉原には行っていました。まあ中心は池袋や新宿、中野だったのですが、何か電化製品をいろいろ探したいときは山手線に乗ってそっちまで行くという感じでした。

さて、今ではすっかりオタクの街と呼ばれるようになった秋葉原ですが、今のような萌え系の店があったのは昔からではなく、10年前、すなわち2000年あたりくらいから徐々にそうなっていったという感じだと思います。で、その前(1995~2000年くらい)はパソコン系のもの(パーツとか)を売る店が多かったですね。この当時パソコンをはじめて自作で作り始めた私は、安いものを得るために店をはしごしたりしたものです。おそらくは価格.comもまだなかった時代の話です。でもメモリだけはいつも一段階安い神和電機だったなあ。あと、アーケードゲームにハマりまくっていた時代だったので、基板屋にも行ったっけ(今はかなり壊滅してしまいましたが)。ちなみにこのころ出来たばかりのとらのあなが、かなり急な階段を上っていくビルの3階にあったりしました。

さらに前、1990年代前半の秋葉原は、家電とゲームソフトの街でした(私にとっては、ですが)。まだ雑多さが残っていたソフマップなどで、スーファミの安いソフトを探したものです。まあこの頃にはオタクの街っぽさはあまりなく、単に電気屋の影にゲームショップなどそっち系のものが少し紛れているという感じでした。

個人的な思い出が長くなりましたが、このように秋葉原というのはかなりめまぐるしく変化をしてきたわけなのですね。そして、表通りに萌え系の店が目立ち始めた現在でも、あちこちにその名残を残しています。一番わかりやすいのは、駅近くの信号後ろ側にある旧秋葉原デパート下側の電子部品小売り通り、それに信号渡ってすぐのところにあるラジオデパート等々。それに合間に電子工作の人御用達の店とかも多く残っていたりします。

最近マンガでも秋葉原を描いたものはたくさんありますが、そんな昔ながらの一面を描いている作品がまんがタイムきららフォワード連載中の『トランジスタティーセット~電気街路図』。

トランジスタティーセット ~電気街路図~ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

『うぃずりず』の里好氏が描くこの作品は、祖父の経営していた部品店を継ごとうしている女子高生、半田すず(やや部品フェチの傾向あり)の物語。

里好『トランジスタティーセット』P13

里好『トランジスタティーセット』P13

その部品街のすずの店の正面にメイドカフェが出来、そこのメイド店主であるすずの幼馴染のみどり(破壊的料理スキル持ち)と再会し、そこからいろいろと話が広がってゆくという感じ(ちなみに部品街なので老人の出現率高いです)。他にもすずに好意を持つ小学生なり怪しい中国人風の女性なり個性的な面々が周りをとりまきます。
文字通り、秋葉原に昔から存在し、今でも残っている部品街を舞台としていますが、秋葉原全体を扱っているため、表通りに出ると萌え系ショップがあったりホコテンWithカメラ小僧がいたり、一時期出てたラブドール風俗にまでちょっと触れられたりしています。あと、そこはかとなく先行者が出ていたのには笑いました。

ちなみに1巻の話では、戦時中の秋葉原、万世橋にまつわる話がこの作品の雰囲気と一風変わっていますが、印象的でした(一瞬F先生の『ノスタル爺』を思い出した)。

里好『トランジスタティーセット』P165

里好『トランジスタティーセット』P165

既存のマンガでも秋葉原を扱っているものは多いですが、このように萌え系やオタクの店以外の秋葉原を扱っているマンガはわりと少数派ではないでしょうか。しかし、私にはこのほうがリアルな秋葉原として受け取ることが出来る感じです。
あと、作者の里好氏も描いているのですが、秋葉原というのはこういった多種多様なものが共存しているところが魅力の一つだと思うのですよね。

話のほうはなんだかメイドのみどりがキーパーソンになりそうな感じですが、それはまた読み進めていけば出てくるでしょう。ちなみにアキバ系マンガでよくあるパターンでは、非オタのヒロインがオタ世界に浸食されていきますが、すずの場合はオタク方面にはどうあがいても染まらなさそうな感じ。いや、重度の電子工作オタか。

ちなみに秋葉原に通っていると、こういったところにもそのうち接点が出てくる様になることが意外とあったりします(音楽環境を整えるためにこういうところで売っているケーブルやオベアンプに手を出したりとかね)。なのでアキバに萌え系の店目的で通っている人は、もう一歩通りを曲がって、そこの光景を見てみませんか。

トランジスタティーセット ~電気街路図~ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

コメント

  1. N より:

    >2000年あたりくらいから徐々にそうなっていった
    そうなんですよ! 秋葉原の小学校に通っていたんですが、
    昔はこんなんじゃなかったんですよねえ・・・

  2. […]  ■萌えの街とは違う側面も持つ秋葉原を描いた『トランジスタティーセット』 – 空気を読まずにマンガを読む […]

タイトルとURLをコピーしました