今後は50巻、100巻に到達するマンガは生まれにくくなる

マンガ

前回、こち亀以外で巻数を重ねているマンガについて書きました。

『こち亀』以外で200巻に到達しそうな長期連載漫画
先日、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の40年に渡る連載が終了しました。こちら葛飾区亀有公園前派出所 200 特装版 40周年記念 (ジャンプコミックス)こち亀の特筆すべきところはいろいろありますが、とりわけすごいのは40年間とい...

しかしこれらはすでにもう何十年前にも連載が始まった作品ばかりです。『ゴルゴ13』『浮浪雲』に関してはこち亀以前からの連載です。

では、これから連載がスタートする作品で、200巻を越える作品は出るでしょうか。いや、個人的には200巻どころか100巻、いや50巻以上でも難しくなると思っています。というのは、長寿連載が始まった頃と今とでは、マンガ界、出版界の状況がまるで異なっているため。

 

100巻出すためには最短でも週刊連載で約20年のペース

さて、こち亀はちょうど40周年、200巻で連載を終了しました(200巻近くではだいぶ分厚くなってきたり調整はありますが)。それは「週刊」を休まず続けてきて、しかも一定数のページがあるマンガで達成できた数字です。ということは単純計算でこれから200巻出すには週刊少年マンガ誌で40年、100巻でも20年、50巻でも10年休まず続けないといけないことになります。しかし20年はともかく10年なら、今連載しているものでいつのまにかそうなってしまったのがありますし、わりと出てくるんじゃないかと思われるかもしれません。しかしながら今までとこれか先のマンガ界の状況は大きく変わることが予想されます。

 

意外と少ない?現在の週刊マンガ誌

まず、現在週刊誌として存在しているマンガ雑誌は以下の通り。

少年誌

・『週刊少年ジャンプ』(集英社)

・『週刊少年マガジン』(講談社)

・『週刊少年サンデー』(小学館)

・『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)

青年誌

・『ヤングジャンプ』(集英社)

・『ヤングマガジン』(講談社)

・『モーニング』(講談社)

・『ビックコミックスピリッツ』(小学館)

・『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)

・『週刊漫画TIMES』(芳文社)

以上です(おそらくマンガがメインの雑誌では抜けはないと思いますが、あったらすみません)。

これを見て、思っていたより少ないと感じた方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。特に出版社として見ても、大手3社が大半で、ほか秋田書店と日本文芸社、芳文社のみ。以前はもっと存在していたのですが、出版不況の影響もあり休刊になったものや、隔週、月2刊行に変わったものも多く存在し(『漫画アクション』『漫画サンデー』など)、純粋に週刊のマンガ誌はこれだけになってしまいました。※追記:さらに『週刊漫画TIMES』は不定期連載が多く、毎号連載しているもののほうが少数派という特徴があります。

マンガ雑誌で一番売り上げが多く、且つ目立っているジャンルはやはり週刊少年誌です。さらにそれに次いで存在感があるのは、それらの系列誌でもあるヤング誌でしょう。故に読み手としてはどうしてもそこを基準としてしまいがちですが、実際はマンガ雑誌の中で週刊というものは、全体から見たら種類としては少数派と言ってよいのではないでしょうか。

 

これから週刊で長期連載の枠を勝ち取るのは難しそう

そして巻数を重ねるにはここで連載をしないと到底届きません。最初に触れた『浮浪雲』はこち亀以前からの連載スタートですが、掲載誌『ビックコミックオリジナル』は月二刊なので、現在107巻とこち亀の半分の刊行数になっています(とはいえページ数や休載増刊掲載、作者のペースなど単純比較はできませんが)。

 

ですから週刊誌で描かないと巻数は増えませんが、これから先のマンガが週刊誌ではすでに長寿枠も固まってしまい、その枠をとるのは恐ろしく難しいでしょう。むしろ、週刊誌自体が縮小傾向にあり、これからもっと減る(月2刊や月刊に移行する)という可能性も多いにあり得るほうが理由として上かもしれません。

 

そもそも単行本が出ないケース

あと根本的に問題なのは、必ず単行本が出るとは限らないこと。これは『週刊漫画ゴラク』ちと『週刊漫画TIMES』に特に言えて、とりわけ後者は500話を超える長寿連載『解体屋ゲン』があるのに、紙媒体での単行本はなんと1巻+コンビニコミック数冊しか出ていないという状況です。

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ただし近年アプリで公開されるようになりました。

[一気読み]解体屋ゲン(こわしやゲン)【漫王】を App Store で

解体屋ゲン(こわしやゲン) – Google Play の Android アプリ

出版不況と言われる状態が今後も続くようであれば、中小のみならず一橋音羽系列の大出版社からでさえ単行本が必ずしも出るわけじゃなくなるなんてことはあり得ます。

 

ちなみにこのあたりの、連載された作品は単行本で出るというパターンというのは実際にはそうとは限らないのに大手週刊誌が多くの場合そのパターンであるので、中小雑誌の連載含めて「単行本は必ず出る」が読者にとっての一般的マンガのイメージになっているような気がします。そしてその思い込みが単行本の売れ行きにかかわってきているようにも。そのあたりについてはそのうち書こうと思います。

 

そもそも連載として続いても巻数を重ねなくなってきている

しかし巻数が増えないだろうという根本的な原因は、そもそも出版社が長期連載していることが目玉となっていて、且つ売れる特殊な作品を除いて、すでに巻数を重ねることを避けていることが大きいと思われます。

前回も書きましたが、本来巻数の数字がもっと増えているはずなのに、新タイトルになって巻数にリセットがかかっている作品はけっこうあります『刃牙』シリーズ、『ドカベン』シリーズ、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズなど。
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それは今は巻数を重ねても既刊は売れず、それどころか棚を占めてしまうので本屋に置いてもらえない、というのが大きいでしょう。さらに新規読者も1巻から読もうとしてもそれがとてつもなく長かった場合、あきらめてしまうこともあり得ますし。少なくともそんなにあるなら既刊は買わずに中古かマンガ喫茶で、なんて場合もありそうです。故に今では一度リセットをかけて新たに新タイトルで1巻からやり直し、そこから棚にも揃い且つ新規読者も新規1巻から読みやすいようにしていると思われます。ちなみに仮にこち亀がまた読み切りなどで掲載され、それがまとまって単行本分になったとしても、201巻としては出ずに『新こち亀』的な扱いで1巻から出るような気がします。

故にこれからの作品はもう数十巻を重ねる前にリセットがかかる作品が大半になるのではないでしょうか。むしろ長期連載作品であってもリセットがかかって新シリーズになる可能性もあり得ると思っています。

 

 

電子書籍の普及で刊行形態は変わるか

以上のような理由から長期連載というものは生まれる可能性はあっても、巻数を重ねるもの。とりわけこれから1巻が発売されて100巻200巻に届くようなものが生まれる可能性は限りなく低いと思っています。

ただ、これから先は紙媒体から電子書籍での閲覧、そして購入も増えてゆくでしょう。しかし電子書籍では1話単位という売り方も可能です。もしかしたら「巻」という単位の概念自体が薄くなり、個別売りや書籍では不可能だった分厚さになってしまうくらいの大量話数単位での売り方になってゆく可能性もまたあるでしょうね。
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浮浪雲(はぐれぐも) 108 (ビッグコミックス):ジョージ 秋山

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