企業Webコミックサイトは不況のマンガ業界を救うか

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ガンガンパワード、そしてガンガンWINGが休刊になる代わりに、新創刊のガンガンJOKER、そしてオンラインのガンガンONLINEへの異動がなされるようです。

ガンガンONLINE -SQUARE ENIX-
ガンガンJOKER -SQUARE ENIX-

さて、もちろん新雑誌も注目すべきものですが、ここであえて注目したいのは『ガンガンONLINE』のほう。

それまでも、出版社の運営する無料のWebコミックサイトというのは存在しました。しかし、その多くはある雑誌があって、それの宣伝目的のおまけ的なサイトだったように思えます。しかし、近年ではこのように無料のWebコミックでもおまけではなく、それ専用に力を入れる出版社が増えてきたように思えます。現在ならば力を入れているサイトの一例として、以下のようなものがあります。

■コミックハイ!公式サイト 》 WEBコミック(旧コミックシード)(2014/4/9リンク切れ)
■UltraJumpEgg

特にガンガンONLINEは、創刊時から衛藤ヒロユキ氏、小島あきら氏などスクエニ雑誌でヒット作を生み出した人が参加している上、今回の合併により雑誌連載がそのまま移ってくるということで、スクエニとしては雑誌と対等レベルと考えていると言えます。

 

何故、ガンガンONLINEはじめ、出版社がここまで力を入れ始めているのか。おそらくは出版不況の影響があるでしょう。

ねとらぼ:「今、漫画雑誌の編集長が集まると、お互いのヤバイ自慢が始まる」 – ITmedia News
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この「マンガ雑誌が売れない」という状況での活路が、このネットでのコミック配信と考えることが出来ます。上のリンク先でも触れられていますが、雑誌の方だけで採算がとれるマンガ雑誌は少数で、多くは単行本の売り上げがその収入をまかなっているという状況。
しかし、Webコミックとして公開すれば、最初のシステム構築費やサーバの代金はかかるにしても、雑誌を販売するよりも経費はだいぶ軽減することが出来、しかも多くの人の目に止まるようにすることが出来ると思えます。それは何より無料というのが大きいでしょう。

たしかに「単行本全編書き下ろし」というマンガもないことはないですが、よほどその作家やマンガに知名度がない限りは売り上げも期待できないために、あまり存在しませんでした(エロマンガとかでは例外があるかも)。よって、雑誌での連載がほぼ前提となっていたというところはあるでしょうね。

しかし今まではさすがにWebコミックでは雑誌の注目度よりもはるかに劣っていた(と出版社に思われていた)ために、雑誌の広報用のおまけ程度な存在でしかありませんでしたが、近年、上記のように雑誌売れ行きの落ち込みが激しくなり、マイナーなマンガ雑誌においてはいよいよWebの注目度と費用面の利点が既存の雑誌と並びつつあるということではないでしょうか。

 

ただ、それなら何で今まで各社が雑誌を捨ててWebコミックに移行しなかったのかというと、それはWebの注目度というよりももっとシンプルで重要な問題があったから。それは「採算性の問題」。

前述のように、今のマンガの主なビジネスモデルは、雑誌を売ってそこで利益を得られなければ、単行本の売り上げで回収するというものでした。しかし、Webで見たものがはたして売れるのかというのは未だに証明されていません。たしかに各Webコミックサイトはビューワーを使い保存を回避し、一定期間で公開を終了しているものが多いですが、それでも一度ネットで見たものを金を出して買う人がいるかどうかというのが不明瞭だというのがあるでしょう。

似たような問題はWebコミックに限らず、各種WebサービスがIT革命の時代から抱えていた問題です。たとえば「無料」という触れ込みで会員を集めまくったサービスは多数ありますが(例として、大橋巨泉の広告で有名なJside.comや、無料プロバイダZERO、旧livedoorなど)、どれも採算性に乏しく、広告収入飲みでのモデルが成り立たなくなると、多くがサービスを終了してゆきました。これと同じで、要はネットではビジネスモデルが成り立つかどうかが非常に微妙な場合があると。

おそらく、ガンガンONLINEはじめ各社のWebコミックサイトも今が判断の分かれ目なのではないかと思われます。そして最近、それらWebコミックサイトからリリースされた単行本がいくつか出てきました。たとえばウルトラジャンプエッグの『文化部をいくつか』(AA)やコミックハイ!の『つぐもも 』(AA)もとはコミックシード)、ガンガンONLINEの『堀さんと宮村くん』(AA)なんかがそうかなと。

 

これからしばらくの間はこのような企業Webコミックサイトからの単行本化が増えるでしょう。で、これらの売れ行きがWeb媒体でのビジネスモデルを成り立たせることが出来るのか、重大なポイントとなると思われます。
とはいえ、個人的には既存雑誌、Webコミック誌のどっちかに偏るというのではなく、それぞれのマンガ公表に向いている形で両方が存在するのがいいのかなと思えます。

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