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岡崎二郎 Archive

平面を舞台にしたSFマンガ『大平面の小さな罪』の引き込まれる展開

 昔、自分がマンガのことについて書くブログを作った理由の一つに、岡崎二郎作品を広めたいという理由があったと述べたことがあります。それくらい岡崎氏の作品は自分にとってとても影響を受けた作品であり、以来岡崎氏のマンガはすべて集めています。
 さて、そんな岡崎氏の著作の中でもお気に入りのひとつに『大平面の小さな罪』という作品があります。これはかつて小学館から出ていたのですが、この度エンターブレインから、復刊されました。

 大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

 この物語は他の岡崎作品同様SF。あらすじは、広告代理店のAD(アートディレクター)宇田川が仕事をしていると、突然作業をしていた紙の画像が動きます。驚くとそこから女性が飛び出して来ます。

 

岡崎二郎『大平面の小さな罪』(エンターブレインビームコミックス)P08

岡崎二郎『大平面の小さな罪』(エンターブレインビームコミックス)P08

 彼女の名前はセーナ。話を聞くと、彼女は『平面管理委員会』というところにいる人間とは変わった存在。それは、平面管理委員会はすべての平面を管理しており、そこに表示されている絵や線などといったものはすべてそこで管理されている。ただその世界は窮屈で、耐えられなくなったセー名は人間の世界で豪勢な生活をするために、宇田川に話を持ちかけ、そこから平面管理委員会で禁じられている商売を始める(お札を動かしたりも出来るけど、それは監視が厳しくて出来ないので、能力を使った商売という形でかいくぐる)、というところからスタートします。

 結局能力を使った広告業は盛り上がるのですが、ふとしたことでバレて元の通りに。しかしその後人間界に追放されたセーナと宇田川は同居することに。その後平面感に委員会にいる人(厳密には人間じゃないのですが)が続々と出てきて事件を起こしますが、セーナは宇田川と組み、いろいろと解決してゆくという話です。
 
 ちなみに主人公とヒロインがいればラブコメになりがちですが、この作品のヒロインは全編通して出て来るセレナですが、ヒロインなのに金に卑しい、気まぐれとおおよそヒロインらしくない要素の集まったキャラとなっています。能力で人助けをした後に、そっから金とるような事を平気でいうし。

 

岡崎二郎『大平面の小さな罪』(エンターブレインビームコミックス)P116

岡崎二郎『大平面の小さな罪』(エンターブレインビームコミックス)P116

 ちなみにツンデレでもない。最後までデレないから。
 しかしセーナは頭が非常に切れ、実は人情があったりと、どっちかというとヒーロータイプのキャラ。それが魅力です。二人の関係も、ラブというよりは、おもしろいコンビになっている感じです。

 この物語は一話完結型ですが、クライマックスまでに1本の筋があり、最後の話でそれが終結し、非常に盛り上がる仕組みとなっています。クライマックスでの頭脳戦による盛り上がりと大逆転劇は、今読み返しても非常におもしろく興味を惹きます。

 ちなみにこの作品の初出は1994年、つまりPCもインターネットも殆ど普及していない時代に描かれたものなのですが、コンピュータ制御に依存する社会について触れられています。これは同じく岡崎氏の作品『アフター0』などでも同じく、インターネット時代以前からネットやコンピュータの存在とその可能性について描かれているのが非常に興味深いです(ちなみにあとがきによると、作者の岡崎氏は、PCはおろか携帯も触ってないとのこと。それなのに『アフター0』含めあの着想には驚嘆させられます)。

 

 SFというと、興味のない方は敬遠されるかもしれませんが、この作品含め岡崎作品は深い設定や考証ながら(この作品でも「五次元幽閉」とか「オービフォルド」とか出て来て詳細はよくわからないけど、細かいことは気にしないでも読めます)、それをわかりやすく読ませるので、初心者にもおすすめです。
 あと、小学館版ではなかった書き下ろしの作者あとがきが、キャラへのインタビューという形でとられているので、一度読まれた方もそれを目当てに再び読み返すのもよいのではないかと。

 

 さて、今月からは発売から時期が経ち品薄となっていた『アフター0』が、文庫版として刊行されます。そちらのほうも楽しみです。旧版とオーサリングセレクション両方持っていますが、私は買います。

 ■アフター0 1 (小学館文庫)
アフター0 1 (小学館文庫)

 ■アフター0 2 (小学館文庫)
アフター0 2 (小学館文庫)

 

大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

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『アフター0』について力一杯語ってみる

 『空気を読まない中杜カズサ』のほうで、こんなエントリーを書きました。

 ■感想系ブログを続けるために書いておいたほうがよい一つのエントリー – 空気を読まない中杜カズサ

 というわけで、今日は私の今まで読んできたマンガの中でどれか10本を選べと言われたら迷わず選ぶ『アフター0』ほか、岡崎二郎先生の作品について精一杯語ってみようと思います。

『アフター0』との出会い

 私が岡崎二郎先生の『アフター0』と出会ったのは学生時代。ちょうど少年誌、そしてヤング誌だけにも満足できなくなってきた自分は、本屋で買えるいろいろなマンガ雑誌を買っては読んでいました。それはビックコミック系からまんがタイムのような4コマ系、マイナーなマンガ雑誌から、当時まだ出始めだった『電撃コミックGAO!』などのマニア系まで。残念ながら成年マンガ雑誌は読めませんでしたが(当時は「有害コミック運動」の名残で、その手の雑誌の販売に厳しかったので)。

 で、そんな折『アフター0』と出会いました。どんな作品かわからなかったのですが、なんとなく柔らかそうな絵だなと思ったのが第一印象。しかし、読むとその不思議な世界に引き込まれ、単行本を買おうと決意。しかしなかなか売っておらず(当時の小学館系でなかなか置いていないのは珍しかった)、自転車で1時間かけた先の本屋まで探しに行って旧刊行の3巻分を購入。そこで一気にハマりました。
 

岡崎二郎作品の魅力

 この作品のみならず、岡崎二郎先生の作品というのは基本的にSFです。そしてSFというものはマンガでも数多く名作があります。そしてマンガの大家と言われる人達もこのジャンルで名作を残しています。例えば巨匠・手塚治虫の『火の鳥』『鉄腕アトム』といったもの、そして藤子・F・不二雄
の異色短編集など。逆に言えばそれだけハードルが高いジャンルとも言えます。しかしながら、岡崎二郎作品は、それらにも劣らない魅力を秘めていると思うのです。
 正直、絵は丸い系でそんな派手ではありませんし、話もすごく派手、というものはあまりありません。しかしながら読んでいると思ってもいなかった展開や「そう来たか」というものが溢れてくるのです。
 例えば、『アフター0』2巻(著者再編集版のほう)の『楽園の問題』というマンガでは、物質を転送する機械が発達して、それを人間の移動する仕組みも出来るのですが、そこでのラストが衝撃的でした。詳しくは以前に書いたので以下に。

 ■セワシには自我がない?~「物体瞬間移動機」は魂を殺すか – 空気を読まない中杜カズサ

 このような近未来SFのほかにも、現代的なSF(父親の魂が息子に転生し、様々な事件を解決する『大いなる眠り子』シリーズ)、そして古代をモチーフとしたもの(『城壁』)など、その着想に驚かされる作品が揃っています。
 また、感動的な話も多く存在します。科学とそれが生み出す悲劇を描いた『遙かなる孤島』、それにアンドロイドと心の在処の問題を描いた『マイフェア・アンドロイド』などがあり、そこでは人間や科学の業に真っ正面から立ち向かっています。ただ淡々と科学の世界を示したりそれを味わうのではなく、こういった「人間」が強く描かれているのがまた岡崎作品の魅力です。

 正直、一つ一つの作品についてもいくらでも語れそうですが、かなり長くなってしまうので、過去に自分が書いたものの一部。

 ■この世にいない人の手紙によい意味で振り回されることの爽快感~『アフター0 大いなる眠り子VI 別れの扉』 – 空気を読まない中杜カズサ
 ■『もやしもん』の主人公のように実際にあんな菌が目で見えたらどうなるかをSF的に考えてみる – 空気を読まない中杜カズサ

 ちなみにここに書いてないものでどれから読んだらいいか迷ったら、岡崎氏のデビュー作でもある『仏陀降臨す』(完全版9巻収録)をおすすめします。最後の予想外の展開には本当に驚かされます。

 ■参考:K大付屬漫畫圖書館
  ※岡崎二郎作品が非常にまとまっているページ。ただ、見るのは本を読んでからをおすすめ。

『アフター0』以外の作品でも魅力が溢れている

 ちなみに今日、本当は『岡崎二郎作品について力一杯語る』予定だったのですが、『アフター0』ひとつでここまで伸びてしまったので泣く泣く割愛(まあ、このブログをやっている限り、しょっちゅう出てくると思いますが)。今日は軽い紹介だけに止めておきます。
 大きく分けて岡崎作品には「SFもの」「自然・動物もの」があります。ただどちらにもSF要素は絡んできます。SFものとしては『大平面の小さな罪』『時の添乗員』『宇宙家族ノベヤマ』、自然、動物ものは『国立博物館物語』『緑の黙示録』『Neko2』『ファミリーペットSunちゃん』があります。
 また、現在は主にビックコミック及びビックコミック増刊において、『アフター0Neo』として、『ファミリーペットSunちゃん』『宇宙家族ノベヤマ』も含めて不定期に掲載されています。

 というわけで、よろしければ読んでみてください。

◆追記
 一応『アフター0』の基礎知識。これは1990年に第1巻が発売され、その後数年かけて6巻までが刊行されました(これがいわゆる「旧版」)。
 しかしその後2002年から「オーサーズ・セレクション」という形で、未収録分と別に連載していた『トワイライトミュージアム』を含んだ全10冊として再刊行。帯の推薦文は小松左京氏でした。
 その後2004年に新版『アフター0Neo』として新しくシリーズ再開。ビックコミックなどで不定期掲載され、スローペースで単行本が刊行されています。最新刊は昨年5月に出た『アフター0Neo』2巻です。

アフター0―著者再編集版 (1) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション)
アフター0―著者再編集版 (1) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション)

アフター0―著者再編集版 (2) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション)
アフター0―著者再編集版 (2) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション)

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