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マンガ感想(青年向け) Archive
学園祭を舞台に展開されるそれぞれのドラマ~『銘高祭!』
- 2010-04-19 (月)
- マンガ感想(青年向け)

ブログ移転、なんとか体勢が整いました。あちこち欠けているところはありますが、更新出来る状態にはなりましたのでさっそく。
で、とりあえず第一発目としては、先日読んだ『銘高祭!』を。
これは『眼鏡なカノジョ』『眼鏡とメイドの不文律』といったメガネ女子&男子を多く描かれているTOBIさんが『まんがタイムフォワード』で連載していた作品です。ちなみに過去の作品もいい感じのものなので、ほのぼの恋愛系とかメイド系が好きな人にはおすすめです。
■参考:『眼鏡なカノジョ』と犬上すくねマンガ、その眼鏡への愛 – 空気を読まない中杜カズサ
この作品の舞台となるのは、ほとんどがこの学園の中のみ。そして期間も春から夏の学園祭までの数ヶ月という非常に限られた範囲のもの。しかし、ここで様々な人達が動き、それぞれのドラマを展開します。
おおざっぱなストーリーは、主人公で生徒会に所属している2年生、紺野みちえが、生徒会長からいきなり学園祭である『銘高祭』の実行委員長をするように命じられるところから始まり。そして慣れないことで様々なトラブルに巻き込まれながらも、学園祭を作りあげてゆくというもの。
この作品は、たしかにみちえが主役であり、慣れない中トラブルを乗り越えてゆくという行動が中心とはなるのですが、それは一人でやってのけているものではなく、必ず周囲に「人」が存在します。
みちえに最も関係してくるのは、幼なじみのたける。関係を外からは「男とか女とかそれ以前の問題」と言われるように、恋愛感情までには至らないものの、みちえに対して度々このたけるの存在がキーポイントとなります。例えば実行委員長になるように言われて迷っているとき、迷っているみちえの本音を引き出すような行動をして、実行委員長になる決意を固めさせます。
ですが、いつも応援している、というわけではなく、今までは消極的で自分たちの近くにいたみちえが実行委員長で頑張っていると離れてゆくような気がして、友人のアキと複雑な気持ちになったりもしています。このへんの心の動きの描写がかなりいい感じです。
そして、みちえやたけるだけではなく、それを取り巻く人間関係も非常に動きます。主なのは生徒会メンバー。そして彼、彼女たちもそれぞれいろいろなことを思って行動します
まず、みちえを実行委員長にした生徒会長。彼女は何を考えているのかわからないところがありますが、重要なところでは道江をサポートします。
さらに、同じく生徒会の桐原。生徒会長と同じ学年でみちえを実行委員長にすることなどに対してなど、うるさく言っている彼。その彼の話が展開するのは、第八話。しかしここでは視点はポスターイラストを描く美術部の後輩、であり、みちえの友人である朝倉の視点から。彼は先輩の美術部員でもある桐原にほのかな想いを抱いており、絵が完成したときに告白しようと考えていたのですが……
あと、やっぱりメガネペアが出てきます。それは生徒会の先輩と後輩の二人。メガネ先輩にあこがれる1年のメガネ後輩。この二人の物語が第三話で展開されますが、もう王道の恋愛ものなので、結構恥ずかしくなりつつもニヨニヨとしてきます。
その他にも多数の学生、あと学園祭当日には外からのお客も含め、『銘高祭』という舞台でそれぞれのドラマを展開します、憎まれ役と思われる教師も、実はいろいろ考えていることがあったりと、脇役までもがしっかりとそれぞれの思いで行動しているのが、イキイキとした学園生活を表していい感じです。
ちなみに、スターシステムを採用していて最初のマンガからもゲストとして登場したりしています。
さて、このような準備段階を迎えていよいよ学園祭に突入するわけですが、みちえが一番自分の計画した学園祭を見て欲しいと思ってるたけるは、当日野球部の試合で参加できません。それでどうなったか……というのは実際にご覧ください。
大きな波乱はそれほどありませんが、かといって平坦というわけではなく、話のあちこちで響く描写が多く、心に残る作品です。欲を言えば、もうちょっと各キャラクターの先が読みたい気はしますが、それはTOBIさんの読み切りや他作品のスターシステムで登場を願うことにしましょう。
学園もの好き、さわやかな恋愛もの好き、幼なじみもの好き、メガネ好きには特におすすめ、そうじゃない人にも読んでほしい作品です。
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『孤独のグルメ』の谷口ジロー感動の短編集『犬を飼うと12の短編』
- 2010-02-22 (月)
- マンガ感想(青年向け)

マンガ家、谷口ジロー氏をご存じでしょうか。名前で思い浮かばなくても、絵はご存じの方も多いと思われます。それはあの作品の作画を担当されているので。
そう、『孤独のグルメ』の作画を担当されているのが谷口ジロー氏(原作は久住昌之氏)。おそらくネットユーザーによる知名度は、この作品からという人が多いでしょう。
しかし、当然谷口ジロー氏はその他にも数多くの作品を発表しています。といっても、『孤独のグルメ』のようなグルメマンガではなく(むしろ『孤独のグルメ』みたいなものが例外的)、主には自然や動物をテーマとしたもの。しかしそれの多くで緻密な絵で自然や生き物をリアルに描き、興味を引かせます。特に犬をテーマとしたものが多く、人間と犬との触れあいを、時には現代の街中、時には戦時中、時には大自然の中での話が描かれ、どれもが非常に読む側の心に響かせる話を展開しています。
特に代表的なのは、40ページの『犬を飼う』という作品。
この作品は1991年に発表されただいぶ昔の作品です。実は私が谷口ジロー氏の作品をはじめて見たのは、『孤独のグルメ』ではなく、学生時代にビックコミックで読んだこれが最初でした。そこでインパクを受けつつもしばらく忘れていたのですが、去年、この谷口ジロー氏の作品がまとめられた本が出版され、約20年ぶりに読んだのですが、同じように感動させられました。
この作品は、夫婦(おそらく作者がモデル)と、長年一緒に暮らしてきた愛犬タムタムの物語。タムタム14歳の老犬となり、日々の生活の中でだんだんと衰えを見せてきます。その様子を飼い主の心情を含めて、リアルに描いています。最初のうち、タムタムは衰えを見せながらも、歩こうとしていましたが、それでも衰えはやって来て、次第に満足な歩行も出来なくなってゆきます。それでも長年夫婦の間に常にいた犬をどうにかして散歩をさせたりしようとします。
そのような状況での散歩の間、通りすがりの人との反応が、夫婦以外の者からの客観的視点として、印象的です。また、歩けないタムタムを見て「可哀想だから抱いてやりなさい」と言う人に対して、「『可哀想じゃない、歩けなくなる方がよっぽど可哀想だ』そう言い返したかったと妻は私に愚痴をこぼす」というものだったり、散歩の際足をガードするためにつけた革袋を履いたタムタムを見て笑う女子高生達など。しかし、時には赤ん坊が衰えたタムタムを撫でたいとといって、撫で覚めます。
しかし、その後も衰えは続き、とうとう今まではなかった排泄物を家でもらすようなことにもなってしまいます。そして散歩も近所の空き地を持ち上げるように移動するだけ。それは夫婦にとっても重労働です。その時のひとコマ。
この時の、飼い主の顔とタムタムの顔がとても印象的です。
しかし同時に、「このままでいいのか、このままでタムは嬉しいのだろうか」とも思うようになります。そしてその後からタムタムは殆ど寝たきりの状態になってゆき、夫婦も世話で負担がかかるようになります。
そしてまた散歩の際、今度は老人に話しかけられるのですが、そんな状態になっているタムタムを見て老婆から言葉は「早く死んであげなきゃだけじゃないかね」というもの。その老婆は「あたしゃね、迷惑かけたくないんだよ」「このこだってそう思ってる」、「でもね、死ねないんだよ……」と、タムタムと同じ立場のように話しかけます。これを複雑な気持ちで聞く妻の顔が印象的です。
そしてとうとう、発作が起こり、点滴だけで生きる状態となってしまいます。そしてその後は……。
一口で言ってしまえば、「犬が死ぬ」という物語ですが、そこには家族同然に暮らしてきた人間の、非常に数多くの心情が籠められています。それはこの作品での『』生きるという事、死ぬという事 人の死も犬の死も同じだった』という言葉に表われているでしょう。故に犬を飼ったことのある人だけではなく、犬を飼ったことのない人にも同じように強く訴えかけるものがあると思います。
ちなみに、この単行本で初めて知ったのですが、その後夫婦がこのタムタムの死をどう乗り越えていったのかというのが、同時収録の続編である『そして…猫を飼う』『庭のながめ』で描かれています。
そして『犬を飼う』シリーズ以外でも、犬や自然をテーマとした名作が揃っています。マタギと子を身ごもった狩猟犬が、息子の敵である熊と相対する『山へ』、金脈探しの主人公が,冬山で出会った老人の話『凍土の旅人』、都会から海辺の田舎に来た少年と年上の少女の物語を描いた『貝寄風島』、ゴールドラッシュのアメリカに乗り込んだ日本人の物語『秘剣残月』、太平洋戦争以前から続く犬の物語『犬の系譜』等々。これら含め全てが読みごたえのあるものなので、おすすめの一冊です。
ただ、『犬を飼う』をはじめとして、なかなか文字では伝えらにくいほど、多くの描写や心情が絵に籠められているのですよね。この絵による表現力が、谷口ジロー氏の真骨頂だと思います。なので上で書いた私の稚拙な文でぱっとしなくても、一度実際に読まれることをおすすめします。
ちなみに全集として、ほか2冊も出ているようなので、こちらもこれから読みたいと思います。
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羽海野チカ『3月のライオン』を読み直すことで発見するもの
- 2009-12-06 (日)
- マンガ感想(青年向け)

ちょいと、というかかなり忙しくて、だいぶ間が開いてしまいました。ちなみに忙しかった理由は仕事がメイン、あと仕事場にすべく部屋を借りたのでそれの手配に。ちなみに後者は仕事場よりもマンガ置き場としての重要性の方が高くなるかもしれません。とりあえずこれで当分は場所を気にせずマンガが買えるのでいい感じ(まあまたなんだかすぐに埋まりそうな予感もしますがそれはそれ)。
で、それはさておき今日からはしばらくその忙しかった期間中に読んでいたもののことになるので、若干古めの要素も入るかもしれませんが、ご了承くださいませ。
まず、『3月のライオン』の3巻を購読。
これは『ヤングアニマル』で連載(不定期連載)されている、『ハチミツとクローバー』の海羽野チカ先生のマンガで、題材は将棋。ただ既存の将棋系マンガのようにその勝負に重きが置かれているというよりは、子供時代からいろいろと過酷なことが降りかかった環境よりプロ棋士となった17歳主人公の少年、桐山零の周辺が物語の主な要素となっています。ですが棋譜もプロ棋士の先崎学氏が担当しているので投げやりではなく本格的です。ちなみに『ハチミツとクローバー』からは全然別の路線のように見えますが、あっちでも真山と先生が将棋にハマって対戦時計を買おうとしているマンガがありましたので、微妙に繋がっているかも。
さて、このマンガ実は1巻をはじめて読んだときの印象は、「かなり暗いマンガだなあ」という印象だったのですよね。それは主人公、零の過去、そして現在に起きた暗い出来事(特に人間関係的な面)での描写が多かったことです。とりわけ10話の『カッコーの巣の上で』(同名の映画あり)は、その幸福とは言えない生い立ちから将棋の世界に入った描写がなされ、かなり気分がローになります。ただ、最初のそんな状態から、話が進む度に3姉妹との交流などでそれが変わってきたり、はたまた義姉の登場や勝負の世界での出来事でそれが押し戻されそうになったりといろいろ複雑に変化する心理描写が見られます。
この3巻では、そんな零の周りとの関係を隔絶するような態度から、徐々に変化が見えてくる、というところがかなり注目するものです。
そして、この巻を読み終わった後、私は本棚にあった(正確には置き場がなく、床に積んであって下の方にあったのですが)1巻と2巻を持ち出して、最初から読み直しました。というのは、この3巻では徐々に明らかになったことがあり(2巻でもありましたが)、それを踏まえて読んでみたくなったため。例えば家庭的な三姉妹長女のあかりが銀座の飲み屋で働いている理由、何故二階堂が零にかかわってくるのか等。そしてそれが判明した時点で読み直すと、それまでとっていた行動において、また新しい発見があるのですよね。特に義姉と零の関係は、1巻だけ読んだときには嫌われていて零も苦手なように思え、物語的には意地悪な悪役的立ち位置だと思わされていたものなのに、それがだんだん様子が変わってきているように思えます。
考えてみると『ハチミツとクローバー』でも、最初のうちはぼんやりとしか表現されていなかったけど、話が進むうちにだんたんと明らかになってきて、読者を驚かせる展開っていうのがかなりありましたね。例としては森田が金を稼ぐ理由やその収入手段や、先生達の過去に起ったことなどがそうですね。特に最初の方から先生がよくしていた手を広げてそれを見る動作が、とある非常に印象的なシーンとして出てきた時には衝撃を受けました(ネタバレなので詳細は伏せておきます)。
『ハチミツトクローバー』含め羽海野チカ先生のうまさは心理描写などいろいろあると思いますが、そのひとつにこういった展開のさせ方が非常に惹かれるところもあると思うのです。
ただ、まだ今まで提示されたもので判明していないものもあります。例えば義姉と過去に何があったのかということや、棋士の後藤を憎む理由など(おそらく今の時点では義姉がらみだと推測できますが)。
ちなみに今、一番気にかかっているのは、友人の棋士、二階堂の今後。どうも彼は他の将棋マンガでもよくモデルにされる村山聖九段がモデルみたいなのですが、彼は29の若さで亡くなります。そして他のマンガでもなんだか急死するようなものがあったような感じなので、本編で病弱な二階堂もなんだかそうならないかなあと若干心配なのですな。これはハチクロでもけっこうメインキャラではないですが死人やら怪我人が出ていたことも影響しているかもしれません。
どのマンガでもそうかもしれませんが、特にこの『3月のライオン』は、買ったらその度に新たな発見を探すために最初から読み直すことをおすすめしたいと思います。もしくは『ヤングアニマル』読者なら、その度に目を通してもよいかもしれません。おそらく4巻が出たら私もそうすると思います。
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冬目景の描く少女マンガ的な美術予備校物語『ももんち』
- 2009-05-04 (月)
- マンガ感想(青年向け)

ここ近年、「美術学校系(もしくは美術部系)マンガ」が増えてきた様に感じます。『ハチミツとクローバー』(美大)、『ひだまりスケッチ』(高校美術科)、『GA』(高校美術科)、『スケッチブック』(美術部)、『ぽすから』(美術予備校)等々。
これらが増えたのは、一般の人からはあまり縁がない「美術系学校(部)」というものが舞台という点で興味を惹くことがありますし、且つマンガ家のほうも美術系の学校経験者が多いので、そういった世界を表現しやすいというのもあるかもしれせん。さらにこういった学部って個性的な面々が多そうですし、実際多くの作品で変わったキャラクターが登場してますしね(もしくはみんな変わっていて、まともな人が苦労するパターンとか)。
で、これら美術系の描写が昔から多かったマンガ家さんがいらっしゃいます。それは冬目景さん。氏は代表作である『羊のうた』でも主人公とヒロインの1人八重樫葉が美術部に所属していますし、『イエスタディをうたって』でも、美術予備校の描写がよく出てきます。
そんな冬目さんの最新作が、美術予備校を舞台にした『ももんち』。
この作品は、美術浪人した主人公である岡本桃寧が美術予備校で様々な人と繰り広げる物語。ちなみに桃寧の見た目はショートカットからか『羊のうた』の八重樫を彷彿とさせますが、性格はそれより子供っぽい感じです。なんというか、『ひだまりスケッチ』のゆのがもうちょっと経って予備校に通ったらこんな感じになるのではという印象。
なんか帯の裏で、その性格が表れているというか。「しゃくとりむし」がツボ。
さて、冬目マンガでは『羊のうた』『ハツカネズミの憂鬱』など暗めのテイストの作品と『イエスタデイをうたって』のようなものがありますが、これは後者タイプ。ただ、そこは冬目テイストというか、独特の空気が流れます。
例えばこの桃寧の家族では、父が放浪しているのですがそれにまつわる兄や姉、そして母との間の空気が冬目節で流れている感じ。
また、この作品のあどがき冬目さんが「目指したのは昔の少女漫画」と描いているように、桃寧やそれをとりまく周りの人の関係が、そんな感じっぽくなっています。つか、あまりの桃寧の純情さは、まさしく昔の少女マンガ的な感じで、見てて親心が沸いてきそうな感じです。
で、少女マンガらしく恋愛模様も様々で、友人含め様々な恋愛(もしくはあこがれ)が繰り広げられますが、しかもそれは受験という環境もありハッピーなものばかりではなく、それぞれの持つ淡い心境が伝わってきます。ついでに両親の関係もある意味そんな感じかも。
というわけで、最近の美術系マンガやアニメに興味を持った人、昔の少女マンガテイストの作品を読みたい方、冬目さんのファンの人(とりわけ『イエスタデイをうたって』が好きな方)は読まれるよ良い感じだと思います。
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