農業をしていた立場からの貴重なエッセイコミック、『百姓貴族』

荒川弘さんといえば、先日長期の連載を終えて終了した『鋼の錬金術師』の作者として有名でしょう。ごく少数の人だけ『ゲーパロ4コマグランプリ』を思い出しているかもしれませんが。

鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)
鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)

さて、その荒川さんがスクエニ以外でもマンガを連載し、単行本を出しているのはご存じでしょうか。それは、これ。

百姓貴族 (WINGS COMICS)
百姓貴族 (WINGS COMICS)

『WINGS』で連載中の『百姓貴族』。タイトル通り、もともとは北海道で農業をしていた荒川さんの農業コミック・エッセイとなっています。新書館の雑誌というと『WING』含め、ほとんど女性向きのマンガのイメージがありますが、これは女性のみならず、男性も面白く読めるものとなっています。

内容はもちろん実際に体験した農業のこと。荒川さんは実家が農業経営で、マンガ家になる前は北海道で7年間農業をしていたそうで、その時の体験をもとに、このマンガが描かれています。しかし単純な経験をそのまま記したものではなく、そこは荒川さんだけあって、ギャグが冴え渡るようにおもしろおかしく描かれています。ノリはハガレンの巻末マンガな感じなので、あれが好きな人なら楽しく読めます。

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P24

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P24

ちなみに個人的に一番好きなのは、ジャガイモの収穫中、選別機から何故かポテチ(未開封)が出てきた時のツッコミ。「生き急ぎすぎだイモ!!」。

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P9

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P9

このマンガが非常に注目な点は、実際に農家に生まれ、そして農業(酪農含む)を経験して育った作者の立場から「農」というものが描かれていること。今までも農業のマンガは、アニメ化、ドラマ化された『もやしもん』など、それなりにありますが、実際に内部からの視点で切り込んだことが書いてあるのはなかなか見られません。特に生活に根ざした点は、読んでいてかなり興味を引かれます。

実際に体験されたらしきことが多いのですが、農業にほとんどなじみのない私にとってはかなり新鮮なことが多く描かれています。例えば農業の実際の体験録はもとより、それによる周囲のこと(野生生物との対峙や野菜泥棒について、また農業高校での生活なども)も描かれています。

その中にはどう見てもサケが農場に転がっているとか「そら嘘だろ」と思えるようなものも(川と台風によるものらしいです)。

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P68

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P68

余談ですが、北海道の人のジンギスカン重視は、うちの周りの北海道出身の人の誰に聴いてもそう言いますな(ちなみにうちの親父も北海道出身なので、50年前の上京時に持ってきたというでっかいジンギスカン鍋が物置にしまってあるという)。

あと、生産調整についてなど、農を行なっている上での心情も描かれています牛に対する気持ち。酪農、畜産業では家畜は生活の糧であると同時に消費財されるものでもあります。故に育てても肉にして出荷することになりますし、病気になった時などは処分しなければなりません。しかし、そこでもただ単にものを右から左に動かすのではなく、やはり複雑な想いがいろいろとあるようです。

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P80

荒川弘『百姓貴族』(新書館ウイングコミックス)1巻P80

このような農業を実際にされる方からの話というのは、マンガに限らず多くは無いと思うのですよね。現在農業問題についてはニュースやネット、その他媒体でいろいろと言われることがあります。特に食糧自給率の問題とか。ただ、その中に実際に農業をするしている人の視点というものは不可欠でしょう。そういった意味で、本書は貴重な一冊だと思います。目の前に当たり前のようにある食物に対して、少しでも意識する機会ともなるでしょう。

ともあれ、農業に興味がある人はもちろん、興味がない人も一度読まれることをオススメします。わかりやすいですし、荒川さんのギャグも冴え渡っていますし。

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百姓貴族(1) : 荒川 弘

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