完結した物語としてのマンガを評価する賞があってもよいのではないか

ここのところ毎年の名物になっている 「このマンガがすごい!」の2010年度版が出版されるようです。

このマンガがすごい! 2010

見たところ、今年は週刊少年ジャンプのものが多く、それについて賛否両論あるようです。それは『バグマン』や『ONE PIECE』がふさわしくないというわけではなく(むしろ最近の『ONE PIECE』の面白さはかなりの人が納得するところでしょうし)、『このマンガがすごい!』という企画が、今まで知名度の低いマンガを発掘するというのがひとつの特徴だったのに対して、今年のはもともと知名度が高くなってしまった点にあるでしょう。でも『星守る犬』がランクインしているあたりは、その傾向が全くなくなったわけではないとは思いますが。
これは、どうやら集計方法が変わったというのもあるようです。

■参考:『このマンガがすごい!』がちょっと納得いかない件について: 漫棚通信ブログ版

とはいっても、ここのベスト10がおもしろくないか、というとそういうわけではなく、たしかに今まで知らなかった人は読んでも損をしないレベルのものが多いでしょう。ちなみに私は女性向け部門のほうで知らない作品があるので、そっちを読んでみたいなと。

ただ、『このマンガがすごい!』で選ばれているマンガは、一つ留意しておかなければいけないことがあります。いや、これに限ったことではなく、マンガに対して与えられる賞的なもの、すなわち「講談社漫画賞」や「小学館漫画賞」なども含めたものは、ほかの分野、たとえば小説や映画の賞とは大きく違った特徴があるのです。それは、殆どの場合その評価された作品が、まだ連載中、すなわち完結していないということ。

現在、マンガの発表形式には雑誌連載と読み切りがありますが、多くの場合注目される作品は連載です。それは日本においてのマンガは雑誌の連載が前提として発表されてきた、というところにあるでしょう。そのこと自体はそれがマンガを発展させてきた方法でもあるので、デメリット(作家の思い通りに話の長さを決められない等)もあれど、全否定すべきものではないでしょう。しかし、これに対して「賞」として評価を与えようとすると、ちょっとした問題が生じます。すなわちその作品が盛り上がっている時はどうしても作品の途中になってしまい、このようなマンガの賞を与えるのはあくまで「作品の途中までの評価」に対して与える形になってしまうということ。

映画の場合、その90分なり120分なりの枠内で終わらず続編になることは希です。したがって映画の賞では審査する人間はほぼ必ずその作品を最初から最後まで見ていることになります。小説の場合も、新聞連載などもありますが、殆どの場合はそれが単行本化して、一つの作品として完結してからの評価となっています(シリーズとして続く場合も、だいたいは一冊単位で完結していますね)。一冊を読むのにも1日かからないケースも多いでしょう。

しかしマンガの場合は前述のように、長いターンで話が展開されてゆきますので、どうしても話題となるときは完結した時ではなく、途中なのですよね。かといって連載が終了してからだと、話題としては収束してしまっている作品が多いので、賞としては盛り上がりませんので難しいのかなと。

たしかに、途中まででもおもしろい、ということは賞を受けるに十分なのかもしれません。ただ、その賞を取った作品がそのあと完結まで誰もが賞を受けたことに納得するデキである、ということは思わないのですよね。

たとえば第21回講談社漫画賞一般部門を受賞した『ドラゴンヘッド』という作品があります。映画化もされましたね。

ドラゴンヘッド (1) (ヤンマガKCスペシャル (519))

私の記憶ではこれが受賞したのはおそらく序盤のトンネルシーン前後くらいかと思います。しかしこの作品、最終回が賛否両論となります。否定的見解を持つ人の中には、賞は違うだろ、と思う人もいるのではないかと。私は消化不良な面はあれど、一つの作品の表現としてああいう終わり方もありだとは思います。ただ、多くの人にとってその賞を受賞した時と完結した時では違う印象を持つでしょうね(ちなみにこの賞と受賞後の話については『タカヤ!』を思い出す人もいるかもしれませんが、あれは読み切りに与えられた賞の連載ってことで、ちょっと話が違うかな)。

たしかに「連載中のマンガに対して賞を与える」というのも、その作品への期待値も籠めるとしてありだとは思います。ただ、どうもそれに偏りすぎているのではないか、と思えるのですよね。手塚治虫文化賞は完結した作品にも贈られることがありますが、連載した作品も混じることが多いですし。ただ、連載中の評価もいいですが、「完結して全てを見た時にどうだったか」というものの評価は、後世に対して必要ではないでしょうか。

で、今日書いたことは2年前に書いたことを思い出して、ちょっと膨らませてみたものなのですよね。

漫画賞といえば、新人の登竜門である賞が有名ですね。例えばジャンプの手塚賞、赤塚賞など。だけどもう1種類、新人を…

そこで、『毎年「今年一年間に連載が終了した作品を対象とした(読み切りも可)作品だけの投票」とかすると、面白いかもなと思います。』ということを書いたのですが、今でもそれはあったら面白いのではないかと考えます。そして連載が終わったから出来る、一気にまとめ読みという贅沢もできますしね。

本当はこのブログの企画としてやりたいのですけど、とても時間がないのでどなたかやってくれませんかね。もしくは『このマンガがすごい!』みたいな出版企画としてとか。どっちにしてもその暁には参加させていただけると嬉しかったりします(相変わらず他力本願)。

個人的に注目は、来年か再来年あたりには完結しそうな『鋼の錬金術師』。これが最後にどのような終わり方をして、全体を見たときにどのような印象を受けることとなるのか、今から期待しています。あとはこの前書いた『3月のライオン』もかな。でもこっちはしばらく終わりそうにないですが、これも『ハチミツとクローバー』みたいに完結した時読み直して素晴らしい作品になってほしいなと思います。

■参考

羽海野チカ『3月のライオン』を読み直すことで発見するもの
『3月のライオン』の3巻を購読。これは『ヤングアニマル』で連載(不定期連載)されている、『ハチミツとクローバー』の海羽野チカ先生のマンガで、題材は将棋。ただ既存の将棋系マンガのようにその勝負に重きが置かれているというよりは、子供時代からいろいろと過酷なことが降りかかった環境よりプロ棋士となった17歳主人公の少年、桐山零の周辺が物語の主な要素となっています。ですが棋譜もプロ棋士の先崎...
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コメント

  1. うにうに。 | BliBlo より:

    […] ■「完結した物語としてのマンガを評価する賞があってもよいのではないか」>● […]

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