今のマンガ単行本出版事情と読者認識のすれ違い

もし、「マンガ雑誌で連載したマンガ作品は必ず単行本が出る」、「単行本は出たら必ず連載終了までの巻数が出る」、「単行本はたとえ売り切れても廃版にならない限り増刷がかかり続ける」とこのブログで書いたなら、おそらく今では簡単にマンガ家のどなたかの方の目に入り、「そんなわけあるかい!」というツッコミが入ると思います。これはマンガ家のみならず、多少マンガ業界のことを知っている人であれば、これが必ずしも正しくはないということはわかるでしょう。

しかしながら、マンガは読むけどそこまで業界のことを知らないしそもそも知ろうと思わない多くの人は、普通にそう思っているのではないか、そしてそのことが作者も読者も望まない展開を生んでいるのではなかろうか、と思ったので今日の話。

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昔の週刊少年誌単行本のイメージ

世間の人にとって、マンガのイメージというのはやはり週刊少年ジャンプ、サンデー、マガジンといった大出版社(集英社、小学館、講談社)の週刊少年マンガ誌、それとヤングジャンプやヤングサンデー、スピリッツ、モーニングといった週刊青年マンガ誌という人が多いと思います。それは週刊で刊行されることと、コンビニなどにも置かれることでマンガ本体を目にすることが非常に多いことのみならず、アニメ化やその他の展開で目にすることもかなり多いから。そしてそれら週刊少年マンガ誌に連載されているマンガというのは、ほとんどの場合単行本になっていたので、それを当然と思っている人も多いでしょう。実際2000年くらいまでの各誌の連載作品であれば、単行本になっていないものを探すほうが難しかったと思います。

それら昔の週刊少年マンガ誌においての連載での通常が、他の隔週刊、月刊、季刊などのマンガ雑誌における連載においても同じと思い込んでしまっている人はわりといるのではないでしょうか。つまり、最初に書いたような「連載していれば単行本は必ず出る」し、「単行本は出たら(売れ行きに関係なく)連載が続いているなら次も出る」という感じ。

単行本は必ず出るわけじゃない

しかしながら、「そうではない」というのはマンガ業界内部の人間ではなくても、メジャーな週刊誌ではないものに注目しているとわかります。

私は4コママンガ雑誌の多くを毎月買っているのですが、その中で単行本になってもいいだけのストックが溜まっているはずなのに一向に単行本が発売されないものがあります、というかかなり多いです。さらに単行本が出ないまま長寿連載になっているというものもけっこうあります。

しかし出たといっても安心は出来ず、1巻~2巻程度で刊行が止まってしまうものもあります(その状態のまま雑誌では長寿連載になるケースも)。そうなると単行本でだけ読む人にとっては話はぶつ切れになってしまうのですが、それでも出ないと。おかげで4コマ雑誌は捨てられない状態になっていて、且つ最近は自炊もする時間がないので、雑誌が積もっています(だから「まんがライフGIGA」に踏み切ったというのもある)。

だけど、こっちが特別なのではなく、マンガ連載の総数から考えると、むしろこういう「単行本が必ずしも出る保証のない連載」のほうが当たり前とも言えます。むしろ、連載をしているのに単行本が出る方がかなり珍しいという世界だってあります(なめくじ長屋奇考録を読みつつ)。

読者イメージと実際との乖離が生み出す悲劇

ただ、一般的にはやはり最初に書いたように「マンガ雑誌で連載したマンガ作品は、必ず単行本が出る」、「単行本は出たら必ず連載終了までの巻数が出る」と思っている人はけっこういるのではないでしょうか。そして何より「いつ買っても同じ」で「売り切れても廃版にならない限り増刷がかかり続ける」だから「後回しでも全然大丈夫」と思っている人は、たぶんマンガ家の人が思っているより相当いると思います。だって、以前は自分でさえそう思いがちでしたから。つまり売り切れたらわりとすぐに増刷がかかり、その時に買っても大丈夫、というように。これはネット通販でマンガが簡単に買えるようになったためというのもあるかもしれません。しかし、現実はどうでしょうか。

最近はネットの発達においてマンガ家の人がブログなりTwitterで発言することは全く珍しくなくなっています。たとえば以下のみずしな孝之先生のTweet。


仰っているように、このようなマンガ家の人のTweetは最近では見られることがあります。しかしこれらを見て「えっ、そうなの?」と思った人はけっこういるのではないでしょうか。というのは、こういった現在の、そして大多数である週刊少年マンガ誌ではないマンガ業界、出版業界の事情って、読者の側からはほとんど見えないので。だから今は買わずにスルーしても大丈夫と思ってしまっていると。

さらには昔からアンケートが重要とはよく言われましたが、最近ではそのアンケートよりも単行本の初速が重要というツイートもあります。

また、連載している作品についても、過去このような発言がありました。

連載中に反響が少ないと、続けられないという話。これはたしかに興味があるので単行本を後でまとめて読もうという人にとっては衝撃的ではないでしょうか。

しかしこのような現在の状況をわからず、結果として何もしなかったが故に好きだったのに終了してしまうという、作者はおろか読者にとっても悲しい、どっちも得をしないという現象が生まれているような気がするのです。

業界内部や作り手からの積極的発信は重要と思う

繰り返しになりますが、近年ネットの発展でこのような実情を語って「単行本を買って下さい」と仰る作り手の方が増えました。そのような認識のすれ違いを防ぐために、実情を話して単行本をアピールするというのは正しく、重要な行為に思えます。ましてやTwitterのフォロワーというのは、その単行本を買ってくれる可能性のある、興味を持っている人なわけで。

自分の業界の内部のことを話すのは抵抗がある気持ちはよくわかります。自分もそれをするのには抵抗があるし(だからブログでもオブラートに被せたり、むしろこのハンドルネームではほとんど言わなかったりしますし)。ですけど、アピールしても問題ない部分に関しては、こういった欲しいのにない、という悲しいすれ違いを防ぐために、もっと内部の方は声高に現状をアピールして、売れるようにしたほうがいいと思うのです。それはもうしつこいくらいにでも。むしろネットでは「そんなの当たり前」といわれるレベルくらいにならないと、ネットをそこまで見ない多くの読者には伝わらないと思われます。

己の『常識』は必ずしも他人の『知』に非ず、他人の『常識』は必ずしも自分の『知』に非ず、というのはブログをやっていてもよく痛感することです(特にTimestepsにおいては)。それは出版でも同じで、業界にとっては常識かもしれないことでも、読者にとっての常識とは限らないわけで。

もちろんそのさじ加減がわかっている編集の方がするのもいいですが、読者に対して説得力があるのはやはりマンガ家、作家といった作り手の人なので、そこの人が声を出すのが効果があるのではないかと。そうすれば悲しい行き違いは多少なりとも改善されていい方向に向かうと思います(思いたいです)。

正直外部の人間がこういうブログを書いたところで、あくまで「外部から想像して勝手に書いている(だから全然筋近いの可能性は高い)」となってしまうわけで。かくいう自分も完全に内情をわかっているわけではなく、いろいろな発言からの推測によるものが大きいわけで、けっこう慎重に書いてます。もしかしたらこれはネットの声だけで、実情はそうでもなく、さほど深刻ではないのかも、とかいう気持ちもあるわけで。だからこそ知っている人に書いて欲しいという気持ちがあります。

読者が出来ることをまとめてみる

現状、好きな作品を途切れさせないようにするのには以下のようなところでしょうか

単行本は発売から出来るだけ早く、一週間以内が勝負。だから作品は極力その時期に買う(予約するとさらによし)。
……今回の記事、この一文を補強するために長々と書いていたようなものです。

・連載中の反応も重要(アンケートなど。あと他にも?)。

・何時買っても作者の利益や出版のプラスになるわけじゃない。

等々。

もちろん出版社やそれぞれの雑誌によって違うでしょうけど、少なくとも同じ金額払うのに早い方がいいし、無反応より反応があるほうがずっといい方向に行きそうですね(追加や修正箇所などがあればTweetなりで書いて頂ければ助かります)。

ちなみにネットのコメント(Tweetやブログでの記事)ってどのくらいこういうのにプラスになるのか(さすがに掲示板は少数が工作できるのでないとは思いますが)というのも気になったりします。でもよくわからないので教えてください。プラスになればこのブログとかでも可能な限り書こうと思えたりするので。

ま、売り上げとか関係なく、好きなものは人に勧めたい気持ちは昔から変わらずで。というわけで〆にこのブログの設立動機のひとつともいえる岡崎二郎作品の最新作岡崎二郎SF短編集 ビフォー60が発売になるので注目というところで今日はここまで。
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岡崎二郎SF短編集 ビフォー60

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